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Selfishly

Selfishly

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(注!!)このお話は、18禁となります。
     暗くて、ロイ鬼畜でエロしかない話になりますので、
     お読みになる方は、それでも構わないと言う方のみ
     お願い致します。
     読まれてからの文句は、なしでお願い致します。
     それでもOKな方のみ、下にスクロールして下さいませ。
     




























『忘却の枷』


闇の中でも仄白く浮かび上がる肢体が、ロイを誘うように揺れている。

「な・・ぁ、はや・・く」

甘く掠れた誘い声は、ロイを煽って仕方ない。
ロイは覆いかぶさるように、愛しい人を抱きしめながらふとした違和感が
浮かんでくるのを感じた。

抱きしめた手には、リアルに相手の喜びが伝わってきて、
それが更にロイの興奮を上げているのにも関わらず、
目の前の身体を愛撫しながら、『おかしい・・』と思う自分が居て・・。

そんなロイの戸惑いを、敏い相手は敏感に感じ取っているのか、
拗ねたように瞳を尖らせては、不満を言葉に伝えてくる。

「なぁ? はやく、ロイ」

甘く欲情を含ませた声でそう囁かれれば、ロイの僅かな理性の糸も、
簡単に断ち切られて、後は相手の身体に、無我夢中で溺れるだけになってしまう。
肌理の細かな肌に手を沿わせば、歓喜を伝える震えが起こり、
甘い香りをふんだんに溢れさせている身体を齧れば、
陸に打ち上げられた人魚のように跳ねて返す。
彼が弱いポイントを押せば、弾かれたように声が上がると言うように、
どこをどうしても、彼の反応が嫌が上でも、ロイの欲情を煽っていくだけなのだ。
はちきれそうな欲望を打ち込めば、眩暈のしそうな充足感で、
身体も胸も興奮の坩堝に嵌り込んでいく。

『こんな事をしては、気づかれてしまう・・・』
そう思いながらも、ありったけの想いでエドワードの身体を弄り続け。
組み敷く身体が順従なのを良い事に、思いとは逆に身体のぶつかりは激しさを増すだけだ。
どれだけ手荒に、激しく突き上げても、エドワードの喉から迸る声は、
常に歓喜で満たされていて、ロイは自分に静止をかけるものもなく
唯ひたすら突き進んでいく。
そして、最後の階に足をかける前に、エドワードを強く、強く掻き抱き・・・。
「エドワード!」
咆哮のように呼ばれた名前に反応して、相手も必死に応えようと
回された腕に力が籠もり、「ロイっ!」と叫んでは二人一緒に高みへと飛び出していく。


真っ白に染め上げられていく意識の中、ふわふわと断片的な思いが舞っては落ちていく。

『そうだ・・・、暗闇に浮かび上がる彼など見た事もなかった・・・』と、
そして気づくのだ。 彼は自分を『ロイ』等と呼ばなかった事を・・・。


今見せられている全ては、・・・唯単に、ロイの願望が映した、夢なのだ・・・・と。





***



「この扉は、決して開けても、覗いてもいけないよ?
 開ければ戻って来れなくなるし、覗いても魅り込まれて戻れなくなるからね」

どうして大人は、そんな陳腐な脅しセリフを吐くのだろう。
そんなセリフでは、子供を誘って誑かすにしかならないだろうに・・・。

この箱の中には、毒が入っているのよ?
これはまだお前には早いから、見てはいけないよ?
ここに近づいては危ないからね。

そんな言葉で子供を翻弄し、悪い道に誘う大人は、本当に卑劣な生き物だ。
大概は、綺麗な箱には、滅多に口に出来ない甘い良い匂いのお菓子が並んでいるし、
子供が見てはいけないものは、知らない世界を垣間見せてくれ、
危ない場所には、子供の好奇心を満足させたり、ガッカリさせたりと
一時の探究心を養わせるだけだと言うのに。

結果さえ知らせてくれてさえいれば、幾ら子供といえど、
むやみやたらと首を突っ込んだりしないだろうに。


そう・・・大人になってからの方が、性質が悪い。
何故なら、結果を判って尚、確かめずにおれなくなるのだから。


ロイはそんな埒もないことを、ぼんやりと目の前に立つ青年を眺めながら、
思い浮かべていた。
ぼんやりとは、暇だからでもあるが、それは対した理由ではない。
忙しい彼に、暇な時間など殆ど無いからだ。
なのでぼんやりとしている原因の大幅は、夜毎彼を悩ませている夢魔のせいだろう。
短い睡眠時間の隙間に忍び込んでは、ロイに一時の快楽の代わりに、
目覚めた時に胸を軋ませる痛みと、それを振り切る気力とを消費させていく。
それが判っていて尚、夢の到来を喜んでいる自分も居て。
その所為か、日が経つっても・・・嫌、経ってば経つほど、鮮明さと克明さで
ロイを虜に、切望させる程に膨らんでいく。
切望が飢えを知らせ、飢えが飢餓感を募らせていく。
なのに、夢魔の訪れを恋焦がれている自分など、馬鹿の極みだろう・・・。
それでも、『止せば良かったのに・・・』とは思わない自分は、
子供以下の分別しか持ち合わせていないらしい。


「だーかーら! 何時になるかって聞いてるんだよ?
 判らない? 判らないじゃなくて、目測位はつけれるだろうが!?
 雨が止んだら? 雨は2、3日降り続くって、天気予報で言ってるじゃないか!」

苛々とした時の彼の癖で、しきりと前髪を上げては、癖のつかない髪が
さらりと額に落ちている様を、ロイは綺麗だなと他人ごとの態で眺めていた。

「ああ、判った! じゃあ、予定が立ったら、即連絡してくれよ?
 頼むぜ、こっちも仕事が山積みなんだからさ、宜しくな」

通話が終わったのか、少々手荒に受話器を下ろし、大きな嘆息を付いては、
忌々しそうに窓の外に降り続いている雨を睨む。

「無理だったか?」

エドワードの今までの様子で、予想は付いてはいたが、いつまでも窓を睨まれていては
適わないので、そう声をかけてみる。

その呼びかけに、憮然とした表情で振り返った相手の瞳に、
自分の姿が宿ったことに、ほんの少しだけ気分が良くなった。
・・・昔から、私は彼に弱いものだ・・・
彼の様子に一喜一憂しては、何とかエドワードの瞳に留まる時間を増やそうと足掻いていた気がする。
そんな自分の健気さには、本人自身が一番驚く発見だが。

「うん、やっぱ無理みたいだな。
 断線したのってここだけじゃないようでさ、まずここまでが辿り着けないらしい」

はぁーと大きなため息を吐きながら、疲れたように向かいのソファーに身を投げ出す。

「全く・・・こんな場所で足止めされてもさ・・・」

そう呟きながら、背もたれに頭を凭せ掛けて、天井を見据えている。
多分、今後のスケジュールを考えているのだろう。

「まぁ、天候はどうしようもないだろ? 
 2,3日で雨も止むようだから、それから考えてみるしかないさ」

穏便な意見を言いながら、ロイは鷹揚に用意されていたお茶を飲んでいる。

「あのなぁー・・・。 まぁ、あんたには言っても無駄だよな」

言い返そうと身を起こしたエドワードが、諦めたように自分のカップに手を伸ばす。
エドワードの上司は、部類のさぼり魔だ。 自分が怒られない状況の時間が与えられたと判れば、
素直にそれを喜んでいるに違いない。
いつもなら、追いかけてくる書類も、さすがに列車も車も止まっているこの状態では、
郵送で追いかけてくる恐れもなく、暫しの時間を満喫できるだろう。

エドワードとて、忙しいこの男の暫しの休暇が与えられると言うなら、
それを許してやりたい気持ちもある。
特にここ最近、疲れが見え始めていたのを心配していたのだ。
が、彼の補佐を務める一人としては、今後の予定のメドが立たないのは、
かなり焦る状況なのだ。

「あ~あ、せめてここに軍の駐屯所だけでもあってくれればなぁ・・・」

そんな思いが口ばらせた言葉に、目の前の上司は露骨に眉を顰める。

「君・・・本当にホークアイ少佐に似てきたな・・・」

どうりで最近、仕事がやりにくいと思ったとか何とかと、ブチブチ言っている相手に、
エドワードは鼻で哂って返してやる。

「はん。俺が少佐に似たんじゃなくて、あんたのお守りをすれば、
 皆、俺らのようになるしかないんだよ」

そのエドワードの言葉に、ムッとした表情を浮かべながら。

「その言葉も、ホークアイ少佐と同じだ・・・」

と面白く無さそうに呟き返す。
それに我が意を得たりとばかりに、笑みを浮かべてエドワードが
「やっぱりな」と頷いている。

「まぁ、でも仕方ねぇよな。
 取りあえず、電話が繋がっている間だけでも、連絡入れて
 今後の予定を組み換えとかなないとな・・・」

この天候と状況では、最悪電話も繋がらないことにもなりかねない。
それに思い至ったエドワードは、性急な動きで電話の方へと歩いていく。
最初に連絡をかけたのは、やはり彼の仕事場での師匠と呼んでいる女性にだったらしく、
しきりと二人で、「困った」「仕事が溜まる」の連発をしている。
そんな会話を子守唄のように聴きながら、ロイはゆっくりと迫る睡魔に誘われて、
うつらうつらと意識を漂わせ始める。
副官たちが、突発の出来事に右往左往しているこの状況で、
のんびりと転寝などしたら、この後何を言われるか丸判りだとは思うのに、
慢性の寝不足のせいで、魅力的な誘いを撥ね退けられそうもない。
白くなる意識が全て染め上げられる最後の瞬間、ロイは自分の持ってきた鞄の事が
チラリと頭を過ぎって行くのを感じながら、流れに身を任せた。




***

「査察・・かね?」

数日前、古株の補佐から聞いた仕事の内容に、思わず聞き返してしてみる。
中央に召還されてからのロイの仕事は多忙を極め、滅多な事では
司令部と中央を不在に出来ない有様だったのだ。
優秀な補佐がもう一人増えてからは、査察や地方の調査なども
幼少の頃の経験から彼が請け負ってくれており、ロイが出向くような事も
なく済んでいる為だ。

「そうです。 今期サウスシティーの市政者が変わった事は
 もうご存知とは思いますが、そのグループと軍との関係者が
 上手く噛み合ってないようです。
 最近になって、度々街の市政者達からの嘆願書や陳情が
 上がってくるようになっていたのですが、来期の税率の会議で
 亀裂が深刻化してしまったようで、軍の方からも仲介役をと
 要請が舞い込んだようです」

「サウスシティー・・・ね」

東方に居る時代から、あそこの司令官とは相性が悪く、
色々とやっかみやら、足を引っ張る真似をされ続けていたから、
ロイの表情が渋くなるのは、仕方が無い。

「はい。 軍から要請が上がった事は、過去無かった事も有って、
 自体の深刻度を高めているようです」

「それもそうだろうさ。 事勿れ主義で、秘密が大好きな御仁だ。
 その彼からとなら、最悪の状態だろう」

そんな状態までほっておいた相手も最悪だが、その中を仲介なら更に面倒な仕事だ。

「・・・しかし、あの御仁がよく要請など出したものだな」

ロイの良く知る人となりの彼は、隠蔽するのが得意で、しかも下手な工作で
後に明るみに出ては、山より高いプライドを削ることの方が多かったと言うのに。
そんなロイの疑問は、ホークアイの回答で解消された。

「いえ、要請は副官を筆頭の将官たちからです」

「将官達から?」

さすがに事の深刻さに、ロイも身を乗り出してくる。

「はい。 ですので査察も抜き打ちにとの、上部からの指示です」

その言葉だけで、ロイは大きく頷いた。

「成る程・・・失脚の材料集めと言うわけか・・・」

「材料は既に集めらているようですので、中将にはその確認と
 ご判断をとの事です」

その話に、ロイは眉を寄せてしばし考え、「判った」と返事を返した。

要は、下克上など起こされる無能者の始末と、その後の対応を押し付けられたわけだ。
面倒な仕事の割には、ロイの得になることはない。
対応が悪ければ、その後の評価が下がるようなものだ。
・・・ただ、少しだけ上手く立ち回れば、ロイの息のかかっている者を
次期の司令官に添えることは可能だろう。
そうなれば、何かと都合は良くなる。
が、それだけの人材と、根回しが必要になる。それもそれとなく。
ロイは現在に至るまでの人脈から、適任者を選抜し始め、その後の対策にも
考えを飛ばしておく。
そんなロイの思考も、長年の部下には判っていたのだろう。暫く逡巡を見せながらも、
控えめに声をかけてくる。

「中将・・・、後任には、エルリック少佐はどうかと言う声も上がっているようです」

「鋼を?」

「はい、これはまだ1部の人間の口だけではありますが、
 そんな声も上がっている事だけは、お耳に入れといた方が良いかと」

「わかった・・・、そちらも手を打っておく必要があるな」

そのロイの返答に、賢い副官は礼をして退出をしていく。
この後は、彼からの指示を待つだけだ。

ロイは独りになった部屋で、音の無い嘆息を吐き出す。

どうして、誰も彼もが自分から彼を遠ざけようとするのか・・・。
永遠に等と、大層な事を思っているわけではない、いや、なかった筈だ。
いずれは道が分かつことになる事は弁えている。 なら何故、それまでの数瞬の間くらい、
同じ道を進ませてはくれないのだろうか。
最近の出来事の頻繁さは、自分たちの袂を分かつ時が迫っている事を示しているような気がして、
ロイの胸の中に、暗澹たる想いを生み出していく。


そして、ロイの胸の呟きが届いたわけではないだろうが、
査察の途中で、足止めを余儀なくされた二人は、軍の助けも得れないような小さな町で
対応上する事となっている。
エドワードのお得意の練成も、広範囲の災害には手が行き届かず、
どしゃぶりの雨では、ロイの焔も出る隙間もない。

奇しくも、ロイの願いどうり、二人揃って同じ場所に佇む結果となっている。



「結構、込んでるなぁ~」

宿屋の1階の食堂兼酒場は、こんな雨の日だと言うのに
かなりの繁盛振りを見せていた。

「それはそうだろう。 何せ、列車を降りた人間が詰め寄せているのだからね」

ロイの言葉に、それもそうだと頷きながら、階段の陰の隅のテーブルに空きを見つけて座り込む。
この小さな町には宿屋は1軒しかなく、列車に乗り込んだ人間が全員押しかけていれば
溢れかえっていたことだろう。
が、臨時の出費が痛む市民の大半は、大人しく列車の中で、運行の再開を待っている。
比較的余裕のある人々が、列車に閉じ込められて過ごすのを嫌って、
この宿にへと移ってきているのだ。
エドワードとロイは、軍の高官と言う事もあって、特別の最上階を借りている。
と言っても、所詮小さな町での事だ。 他の部屋とは違って、もう一部屋間取りがあって、
そこが小さな寝室になっている程度だったが。

今は二人とも、私服に換えて食事にやってきた。
急な災害で苛立つ面々に、それ以上の緊張を強いる必要もないだろうと考えての事だ。
幸い二人とも、軍服を脱いでしまえば若く見えるおかげで、
とても軍のお偉いさんとは思われないだろう。
それでも一応念は入れて、ロイは度無しの伊達眼鏡をかけて前髪を下ろし、
エドワードはいつもきちんと結い上げている髪を下ろしている。
(これは、ロイの意見を取り入れた結果だ。 が、本人にはこれのどこが誤魔化しになるのかは、
 全く理解されていないようだった。 華奢な外見に、綺麗な顔、長く伸ばされた金糸と揃えば、
 自分が中性的で性別がわかり難くなるなど、エドワードには考えられない事なのだろう)

ロイはひょんな目の保養を楽しむ為に、食事のメニューはエドワードに任せることにする。
あれこれと悩んでいる彼に、二人なんだから多めに頼んでも大丈夫だろうと薦め、
結構な料理の数を頼み終えると、取りあえず一段落と、ジョッキを傾けて喉を潤すことにした。

「乾杯」
ジョッキでは格好がつかないが、そう告げるロイに真似て、エドワードもジョッキを上げて見せる。
「っても、何に乾杯なんだか・・・」
ロイと違って、この状況を楽しむ心境には至らないエドワードが
諦めの濃い表情で、小さく首を振って呟く。

「まぁいいじゃないか。 これも、休暇だと思えば、有給も取らずに休めるんだ、
 ありがたいことじゃないか」

「な~に暢気なこと言ってんだよ。 有給なんて、有っても取れたためしもないのに」

ここ数年。 公休さえも、まともに取れない彼らに、有給なんて天国より遠くにある。
最初の1年目は、流れる休暇の数にため息をついた記憶があるが、
2年目からは、馬鹿らしくなって数えるのも止めて、今に至る。

「だからこそ、こんなチャンスはありがたく休ませて貰わねば」

「休んだ後が、泊り込みの日々になっても、同じこと言えるか?」
エドワードのそんな意地悪な言葉にも、ロイは苦笑と共に肩を竦めて返すだけだ。
エドワードとは違って、別にロイは軍に寝泊りが嫌だと思ったことはない。
自分が泊まるときには、当然のようにエドワードも泊り込むから、
勤務に食事に、時には仮眠する部屋まで同じの環境で、
家に帰るよりは、長く一緒に過ごしていた。 そして、意外な程、どうやら自分は
その環境が好きだったらしい。 そんな事に、今更ながら気づかされた。

「まぁ、私はどうせ独りもんだしね。
 ・・・そう言えば、君の方こそ、連絡くらいした方がいいんじゃないのか?」

誰にとは言わない。 出来れば言いたくも無い、折角仕事を離れて、二人でいるこの時にまで・・。

「ん?俺? 別にいいぜ。今までもそんな事したことなかったしさ。
 しょっちゅう帰らない日もあるんだから、いちいち電話されても、
 向こうも困るだろ?」

あっけらかんと返された話の内容に、他人事ながらロイの方が心配になる。

「それは・・・余り、良くないんじゃないのかい?
 せめて、声だけでも聞かせて貰った方が、向こうも喜ぶだろうし」

「そっかー? でも、別にそれで何か言われた事もなかったし、
 言われたら考えるよ」

それ以上その話には関心がないとばかりに、目の前で湯気を立てている料理を
嬉しそうに取り分けていく。

「・・・全く、君の鈍さには、さすが私でも相手に同情するよ・・・」

思わず自分の立場に置き換えて考えてしまうのは、好きな相手が同一なら仕方ないことだろう。
そんなロイの小さな呟きなど、目の前で美味しそうに料理を頬張っているエドワードには
全く届かなかったようだ。


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